本日昼、ある会合で表記題でスピーチをした。
<以下、スピーチ原稿>
東日本大震災で発生した大量の瓦礫の処理が問題になっています。大きく被災した3件のうち、福島県を除く岩手、宮城の両県で発生した瓦礫について、全国の自治体が可能な量引き取り、焼却処理しようという首長らの動きに対して、少数の「住民」が頑強に反対したり、処理を進めようとする首長や議会の口をきわめて非難しているようです。
瓦礫は、これまでの復旧作業によって一応片づけられたとはいうものの、街のあちこちにうずたかく積み上げられたままの状態であり、いずれにしてもこれからの復興の大きな障害となることは避けられません。だから、これを全国の自治体が引き取って、焼却処理しようというもので、被災地から運び出す前にきちんと放射線を測定して、安全であることを確認した上で、引き取るわけだから、一部の「住民」が「不安」を理由にあくまでも反対するのは、少し冷静さを欠いているというほかなく、石原慎太郎都知事が「そんなのは、『黙れ』と言えばいいんだよ」とコメントした気持ちがわかります。
こうした事態に対して「震災直後あれほど『絆』とか言っていたのに、何と自分勝手な人たちか」といった感想が聞かれます。感想としてよくわかりますし、私もまずは同じ感想をもって受け止めたのですが、本当の問題は「正しい情報が正しく伝わっていない」ことではないかと思います。
「放射能の怖さ」について、誤った情報がばらまかれ、普通の人たちが皆不安にならざるをえない状況が生まれているのではないか。原発事故の起こった福島県から飛んでくる放射能やそれで土や草木などが汚染されているというが、それが正確にどの程度の危険度なのか、マスコミに登場する「専門家」と称する人たちが報じたり、解説している内容は、どの程度の根拠があり、信頼できるものなのか。彼らの多くは、本当の意味での放射線の専門家ではないのではないか。
さらに、福島原発の事故を「千載一遇のチャンス」ととらえ、この際何が何でも原子力発電を日本からなくしてしまおうという、政治的なグループ(反原発グループ)が「我が世の春」を謳歌しているように思えます。
こういう状況の中で、私たちは「正しい情報」をきちんと見極めていく必要があります。冷静に、科学的根拠に立った議論や情報の流通になっているか、われわれ自身が見きわめ、地に足のついた震災からの復興を進める必要があります。現在、放射性物質を含む焼却灰の一時保管場所として、県が手賀沼下水終末処理場を提案してきた問題で、印西市と我孫子市で議会や市民を巻きこんだ議論が起きています。この問題では、わが地区選出の滝田敏幸県議が、非常に精力的に取り組んでおられますが、きちんとした科学的な根拠に基づいた認識に立って、責任あるリーダーシップを発揮されている滝田さんに敬意を表します。
昨年、ロシア政府はチェルノブイリ原発事故後25周年を記念して、膨大な総括報告書を発表しました。この報告書の結論部分には、次のような記述があるそうです。
「事故後25年の状況を分析した結果、放射能という要因と比較した場合、精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の破壊、経済活動の制限、事故に関連した物質的損失といった、チェルノブイリ原発事故による他の影響のほうが、はるかに大きな損失を人々にもたらしたことが明らかになった」(中川恵一「放射線医が語る被ばくと発がんの真実」ベスト新書)。