ニュータウンの      
 交通問題にアリの一穴を
編集子がみた初夢  2005.01.15〜02.12
初夢その1  ダフ屋さんに学べ
初夢その2  バスとアタマは使いよう
初夢その3  乗りたきゃ乗りな 千鳥タクシー

千葉ニュータウンの最大の隘路の一つが交通問題であることでは、ほとんどの人が一致するだろう。北総鉄道の高運賃ばかりでなく、地域内交通としてのバスなどの便も極めて貧しいし、「クルマなくしては生活できない地域」と言われるこの地域では、公共交通の不備はいたるところで「交通弱者」を生み出しているといっても過言でない。

 ニュータウンをめぐる交通問題は、いずれも社会的に大きな、そして複雑な要素を孕み、一朝一夕には解決できるものではないが、今回は少しアプローチを変えて、住民が身の回りでもう少しできることはないか、そしてそうしたことの積み重ねがそれなりの効果を生み出す可能性はないか、「夢」に託して考えてみたい。  

初夢その1 ダフ屋さんに学べ

 八五郎「ヘイ、ご隠居さん、おめでとうござんす。今年も相変わらず、よろしくお願いします。ところで、ご隠居、『学徒疎開』って何です? いえね、隣のおカミさんが、こんなに電車賃が高くちゃ息子を今はやりの『学徒疎開』でもさせなきゃ、学校に通わせられないってグチってるのを聞いたもんでね」

 ご隠居「なに、学徒疎開? う〜ん、なるほど、うまいことを言うな。学徒疎開か、言い得て妙ってやつだな」

 八「ねぇ、ご隠居、一人で感心してねぇで、アッシにもわかるように教えておくんなさいな」

 隠「いや、すまん、すまん。実は、ワシも初めて聞くのだが・・・・」

 八「なんでぇ、ご隠居も知らねぇのか」

 隠「いや、初めて聞くのだが、たぶん、こういうことだろう。ここはお前さんも知ってのとおり、電車賃が高くて、特に、高校生や大学生の子供が二人もいると、通学定期代が1ヶ月で10万円近くもかかってしまうご家庭もある。で、一家ごと余所へ引っ越したり、さもなければ子供だけ学校のそばに引っ越させる家庭が後を絶たないと聞いている。つまりだ、高校生・大学生(学徒)だけ、余所へ疎開させるから『学徒疎開』、要するに戦時中の『学徒動員』と『学童疎開』をかけ合わせたシャレらしいな」

 八「へぇー、学徒だけ疎開させるから学徒疎開か、そーかい、そーかい」

 隠「こら、茶化すんじゃない」

 八「あっ、すんません。それにしても、この高い電車賃を下げる、何かいい算段はねぇもんですかねぇ」

 隠「そこだ。今年は長屋の皆とも相談して、『ダフ屋大作戦』というのをやろうと思っている」

 八「何です、その、飲み屋の子だくさん、っていうのは?」

 隠「飲み屋じゃない、ダフ屋だ。うん、つまり、電車の回数券を使って、安上がりに電車に乗ろうという話なんだが。北総鉄道は、朝10時から夕方4時までとか、土・日に限って使える格安の回数券を売り出しているんだ。これは、10枚分のお金で15枚くるから、これを使って、例えば千葉ニュータウン中央駅から高砂まで行くのに、ふつうだと760円かかるのが、この回数券を使うと510円で行けるというわけだ」

 八「へぇー、そんなうまいテがあるんですかい」

 隠「ただ、問題は、回数券というのは3ヶ月という有効期限があることなんだ。3ヶ月過ぎるとタダの紙切れになってしまう」

 八「へぇー、するってぇと、買ってきてうっかりタンスなんかにしまいこんで、忘れちまったりするとてぇへんだ」

 隠「そうなんだ。そこでダフ屋の登場という寸法だ」

 八「ダフ屋って、あの、野球やコンサートなんかのチケットを売りつける連中のことですかい?」

 隠「そう、そのダフ屋だ。たとえば、駅前の商店などに回数券が置いてあって、乗客は駅に行く前にその店に寄って回数券を買ってから、電車に乗れば、33パーセント引きで日本橋まで行ける」

 八「なるほどねぇ。でも、そうすると、うまく3ヶ月以内にいろんな人が入れ替わり立ち替わり電車に乗れば、買い置きの回数券がはけるからいいけど、売れ残りでもしたら、その商店が丸損ですね」

 隠「ムっ、そのリスクはたしかにある。しかし、駅前の商店などだったら、結構利用する人がでてくれば、売れ残って紙切れになる心配はないと思うのだが、こればっかりはやってみなければわからないな。それと、お店の人は仕事のほかに、回数券を買いにくる人の相手をしなければいけないから、この手間もどのくらい大変か、これもやってみなければわからない」

 八「なんだ、うまい話ばかりじゃないんですね」

 隠「だから、たくさんの人の協力が欠かせない。今年は、このダフ屋大作戦をぜひやってみたいと思っている。お前も少し手伝え」

 八「そら、おいでなすった。でも、何だか面白そうだから、ちょっと手伝ってみるか」

 話は飛んで(何しろ夢だから、前後の脈絡なくいきなり場面が切り替わるのである)、ご隠居と八五郎の会話から数ヶ月後と思われる、ある土曜日の昼近く、北総線のある駅前の商店。最前からひっきりなしに人が訪れ、店員から何か紙切れを受け取っては駅へ急ぐ。そうした人の波の中から、数人の主婦の会話に耳を傾けると・・・・。

 主婦A「回数券が簡単に買えるようになって、東京へショッピングに行くのにも便利になったわね」

 主婦B「ホント、助かるわ。私たちがニュータウンに引っ越してきた頃の料金ですもの。回数券なのに、バラで売ってくれるから、気軽に買えるのもいいわね」

 主婦C「そうよね。あの頃から2回くらい運賃値上げで、私たちにとって都心がすっかり遠くなっていたものね。それに、駅前の商店に寄るのも、何年ぶりかしらね。意外に感じ良かったね」

 主婦D「帰りに、さっきのお店で買い物して帰ろうかしら」

 ご隠居と八五郎たちが始めた「ダフ屋大作戦」の結果、北総線に乗る時は、まず駅前商店街に立ち寄って、ばら売りの回数券を買ってから乗車するスタイルがすっかり定着したようである。主婦の一人が言っていたように、回数券を使うことで、北総線は実質的に過去2回程度の値上げ以前の水準で乗車できるようになり、今ではたくさんの人たちが気軽に北総線を使っている。

 また、回数券を買うために駅前の商店に立ち寄ることが多くなったことも、駅前商店街に人々を招き寄せる効果があり、商店街の活性化に役立ったともいわれている。

初夢その2 バスとアタマは使いよう

 ところ変わって、ここはドイツはベルリンの街角(何しろ、夢だから・・・・)。折しも向こうから少々危なっかしい足取りで歩いてくるのは、何と帝王ヘルベルト・フォン・カラヤンではないか。一杯きこしめして上機嫌の帝王、何を思ったかいきなり客待ちのタクシーに乗り込む。

 驚いた運転手がおそるおそる聞く。「これはこれは、マエストロ、ようこそ、私のキャブへ。で、どちらへ参りましょう?」

 帝王「どこでもいい。どこへ行っても私を待っている人が大勢いる」

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 八五郎「ゆんべは変な夢をみちまったな。カラヤンが出てきて、『どこでも私を待っている』ときたもんだ。カーッ、一度でいいからこんなセリフを吐いてみたいもんだね」

 八「けど、こちとら庶民は『どこでもいい』とはとてもいかないよ。熊公のカミさんなんか、昨日紙っぺらをもってイソイソと歩いてるから、どこへ行くんだって聞いたら、夕食のおかずを買いに広告のチラシを手にスーパー・ムラコシに行くんだってやがる。夕食はサバのみそ煮? へっ、どうでもいいけど、帝王とはえらい違いだよ・・・・。ちわッ、ご隠居いるかい!」

 隠「おっ、八か。なんだ、お前さん、風邪はいいのかい?」

 八「てやんでぇ、風邪くらいで寝てなんぞいられるかってんだ」

 隠「おっ、威勢がいいな。やはり、○○の風邪はかかっても軽いらしいな」

 八「何か言ったか?」

 隠「いや、こっちの話だ。ちょうどよかった、今、表通りを走っているバスの増便を陳情する書類を書いていたところだ。お前さんもバスはよく乗るだろう」

 八「てやんでぇ、こちとら江戸っ子だい。あんなかったるい乗り物を停留所で待つくらいなら、自分の足でどこへでも行っちまわあ。けど、増便って言っても、昼間なんかほとんど客なんか乗ってねぇじゃねぇですか。バス会社の方がウンと言うんですかい」

 隠「ムッ、そこが問題なんだ。バス会社が走らせている路線バスも、役所が運営している公営バスも、赤字路線ばかりで思うように増便できない、乗る方からみれば便数が少なくて不便なので、ますます乗らなくなるというイタチごっこなんだな。何か、良い知恵はないものか」

 八「良い知恵だか何だか知らないが、アッシに言わせりゃ、バス会社も役所も工夫が足りないね。特に役所が走らせている公営バスなんて、アッシは前から思っていたんですがね、ああいったバスは、何だって役所からスタートして、また最後役所に戻るんですかね。役所に用事がある人なんて、そんなにいないでしょうに。もっと、人気のある商店だとか、夜の飲屋街だとか、走ってもらえば、アッシだってたまにゃあ乗るんですがね」

 隠「おッ、なかなか鋭いな。やはり、○○は少し風邪を引いたくらいの方が調子がいいのかな」

 八「何です?」

 隠「いや、こっちの話。お前さんの言うとおりだ。もっと住民のニーズが高いところを調査して、ルートを決めれば、もう少し乗りやすくなるんだがな。しかし、そういうことを言うと、役人はよく特定の商店とか企業の前にバス停を作るのはどうも、などといって難しい顔をするんだな」

 八「だから役人てのはどうしようもないんですぜ。アッシのような庶民が行きたいのは、決まった商店や飲み屋なんで、そこの店先にピタッと着けてくれなきゃ、誰も乗りたいと思わないでしょうに。帝王じゃないんだから」

 隠「何だ、その帝王ってのは?」

 八「いえ、こっちの話。アッシだったら、自分の店先にバス停を作らせたいという商店主を集めて、セリにかけるね。一円でも高い値をつけた店の前にバス停を作ってやり、集まった金は公営バスの赤字を埋める。乗りたいヤツから金をとるだけじゃなく、乗せたいヤツからも金をとろうてぇ算段でさぁ」

 隠「なるほど、今日は八がどうかしちまったような冴え方だな」

 八「印西の公営バスは、印西市内だけを循環し、白井市は白井市内だけというのも、役人のつまらん縄張り根性ですぜ。白井の年寄りがジョイフルに行ったり、印西に住むご隠居がぎっくり腰の治療に日医大に行きたくなっても、北総の高い電車しかないってんじゃ、話にならない」

 隠「ぎっくり腰だけ余計だ。ワシも少しアイディアを言わせてもらうと、地域の中を走っているバスは、バス会社の路線バスと役所が走らせている公営バスだけではない」

 八「というと?」

 隠「大きな病院なども、毎日かなりの本数、しかも役所のような縄張りにとらわれず、かなり広い範囲を走らせて、患者を送り迎えしている。自動車教習所、大きな会社の社員送迎バスなど、気をつけてみると、けっこういろんなバスが地域の中を走っているんだな。実は、これまで患者送迎用のバスを走らせている病院などの関係者にそれとなく聞いてみたんだ。仮に、お宅のバスを一般の住民も乗れるようにし、その代わり役所から多少の補助金のようなものを受け取れる制度ができたら、お宅は受け入れますか、とな」

 八「フン、フン、それで?」

 隠「何ヶ所か聞いてみたが、ダメだという病院はなかったな。ただ、病院のバスなので、体の弱った患者さんが乗り込んできたら、一般の人は席を譲るなど、一定の条件やルールが必要という事務長さんもいたが、頭からダメという人は一人もいなかった。石頭の役人が公営バスを運営するよりも、そういう民間のものをうまく使わせてもらい、お礼の意味で補助金を出す方が、少ない税金で、今よりたくさんの本数やルートを走らせることができるんじゃないかな。病院なども、補助金が入ることでバスを走らせている負担を軽くしたり、あるいは補助金を使ってバスの本数を増やせれば、患者さんにももっと喜んでもらえるかもしれない」

 八「なるほど」

 隠「病院も教習所のようなところも、なるべく「お客さん」に便利なルートや時間帯を考える姿勢を最初からもっている点も、公営バスと違うところだし、役所のような「縄張り」でルートを決めないところも、乗りやすいのではないかな。」

 八「そしたら、ご隠居も心おきなくぎっくり腰を治しに、日医大に行けますね」

 隠「ぎっくり腰だけ余計だったら!」

初夢その3 乗りたきゃ乗りな 千鳥タクシー

 八五郎「大変だ、大変だ、ご隠居、熊公のヤツが警察につかまった!」

 ご隠居「何? いったい何をしでかしたんだ?」

 八「いえね、ゆんべアッシと横町の飲み屋で一杯やった後、一人でクルマを運転して鎌ヶ谷まで飲み直しに行った、その帰り道酔っぱらい運転で御用となったんでさあ」

 隠「あきれたな。最近、飲酒運転の罰則が厳しくなったのを知らないわけでもあるまいに」

 八「わかっちゃいるけど止められないってヤツでさ。けど、警察も何だって飲酒運転だけそんなにムキになって取り締まるんですかね。もう少しお目こぼしがあってもよさそうなモンじゃありませんか」

 隠「それは無理だろうな。酔っぱらった挙げ句に、非常に悪質な運転で人を何人も轢いたり、傷つけたりする事件が後を絶たないからな」

 八「けど、この分じゃ飲み屋が参っちまいますよ。最近じゃ、どこの飲屋街も夜の七時も過ぎると閑古鳥が鳴いているってぇ案配ですからね。アッシら飲んべえだって、外で飲めないから、家に早く帰るようになったのは良いことなんでしょうが、前だったら仕事上のトラブルや悩み事も、帰り際同僚と一杯やることで水に流せたんですがね、今じゃノミニケーションとやらとも、すっかりご無沙汰ときたもんだ。この分じゃ、働いている人たちのストレスもたまる一方ですぜ。街の活気だって、昔のように夜になっても人がゾロゾロ歩いていた頃が懐かしいね。最近は何だか寂しすぎまさあ」

 隠「ウン、それも問題だな。何とか、警察のめざす酒気帯び運転の追放とノミニケーションが両立する方法を考えないとな。ただ、今でもタクシーや運転代行などを使おうとすれば使えるわけではあるんだが」

 八「そりゃあダメだ。アッシらのように割り勘で一人1500円ポッキリで飲みあげた後、タクシー代や運転代行が2000円かかったってんじゃ、話になりませんぜ」

 隠「まあ、それもそうだ」

 八「でぇいち、タクシーや運転代行を使える人種は、今だって飲み屋や料亭を利用しているんだから、そんな連中のことより、アッシや熊公のような、仲間内でしょぼくれた飲み方をしていた連中が飲みに行けなくなっていることを、少しは考えてもらいてぇね」

 隠「・・・・・」

 八「要するに、アッシや熊公のような連中は『夜の交通弱者』なんですよ」

 隠「酒気帯び運転で捕まるヤツが『交通弱者』とはおそれいったな。まあ、ワシも少し関係先を聞いて回ったりして、何か良い策はないものか考えてはいるんだけどな」

 八「さすが、ご隠居。で、何かいい算段は浮かびましたか」

 隠「ウン、いい算段かどうかわからないが、「千鳥タクシー」なんてのはどうかな」

 八「千鳥足タクシー? 何だか運転手が酔っぱらってるタクシーみたいで、大丈夫なんですか」

 隠「千鳥足タクシーじゃなくて、千鳥タクシーだ。運転手が酔っぱらっているのではなく、酔っぱらいをワンコイン(500円)で家まで送り届けるタクシーというわけだ」

 八「えっ、500円で家まで? そいつぁ、いいですね」

 隠「飲み屋から一定の距離以内であれば、帰りのアシを一律500円に設定してあれば、皆安心して外で飲める。飲み屋やタクシーなどの業界にとってもお客が増えるだろうから、十分検討に値するアイディアだと思うがね」

 八「そりゃ、そうですよ。閑古鳥が鳴いている飲食街もようやく明るくなれるってなもんだ」

 隠「ただ、これも一昨日の北総線回数券の話と同じ、いやそれ以上に大勢の人たちの協力なしにはできない話だ。どこでも500円というのでは、乗せるタクシーの方からすれば、赤字になってしまうから、どこかで埋め合わせなければならない。どこかといっても、この場合客を送り出す飲食店が埋め合わせるしかないわけだ。だから、かなりの数の飲食店がネットワークを組んで、個々の飲食店の負担を軽くする工夫をしていかないと、客が増えるといっても、この負担に耐えきれなくなってしまうおそれがある」

 八「う〜ん、大変ですね」

 隠「もうひとつは、これまでのタクシーや運転代行だけでなく、いろいろな立場の人たちが千鳥タクシーの運行に関わってくれれば、事態は変わってくるかもしれない」

 八「というと?」

 隠「昨日話した、公営バスをふくむ、いろいろな種類のバスも、運転手の確保さえできるなら、運行時間を大幅に緩和して、夜の飲食街を走らせるとか、あるいは普通のドライバーがアルバイト的に酔客の送り迎えをするとか」

 八「それって、もしかして白タクでは?」

 隠「白タクといっても、直接客とお金のやりとりをしなければ、違法にはならないらしい。それに、どこかの地方で白タクの構造改革特区を実施しているという噂もきいたことがある」

 八「白タクだからといって一概に白い目で見ないで、この際利用できるものは何でも検討しようということですね」

 隠「そのとおり。そこでこんな標語を考えた。八つぁんも、一緒に声を出して読んでみなさい。」

    飲むなら乗るな、飲んだら乗るな

        飲みたきゃ乗りな 千鳥タクシー

 八「何かヘンなの。でもホントにこんなタクシーが実現するといいですね」