ケビンの  カントリー・ランブリン

2012年
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四月 十月
五月 十一月
六月
「月刊 千葉ニュータウン」連載(2012年1月〜)  
※本文中のイラストは、クリックすると拡大画面になります。

 Best wishes during this season of the cicada serenade

 ぼくは千葉市若葉区にある東京情報大学で教壇に立っている。一年生向きの前期担当科目は「文化人類学」で、生徒の評価は学期が半分終わったところで実施する中間テストと、最後のビッグ・テストに基づいて計算する。最初に学生たちに配るスケジュールには、この両テストのタイミングはそれぞれ「クリの花が咲くころ」と「ニイニイゼミが泣き出すころ」と書いてある。

 クリとニイニイゼミは信頼性の高い季節の便りだ。クリは6月の中旬で香の良い花を咲かせる。小さくて可愛いニイニイゼミは他のセミより一足早く出現し、7月の末、梅雨が明けるととたんに泣き出す。このセミの鳴き声はぼくの耳に「ニイイイイイ、ニイイイイイ、ナツヤスミイイイイイイ」と聞こえてくる。

 このようなスケジュールを学校で使うのは、学生達に自然や季節の移り変わりに目を向かせたいと思うからだ。

  日本人は昔から、身近な自然の動きを徹底的にフォローして、独特な季節感を生み出してきた。例えば、猛暑が続く今の時期でさえ、伝統の暦や季節感の上ではもう秋が始まっている(8月7日は立秋)。一見、日本の季節感が時期的に狂っているように見えるが、実は身近な自然に目を配ると今でも季節の変わりの気配を感じとることができる。

 The traditional Japanese sense of the changing seasons is based on close observation of minute details in the natural world.

 きめ細かい季節変化を肌で感じたいのなら、ニュータウン周辺の野山をちょっと散策すればよい。昼前後の猛暑を避けて、太陽が西の方に傾いたころに出かけるのがベスト。薄暗い針葉樹の植林のそばを通ると、林の中からカナカナと疳高い鳴き声が飛んでくる。これはヒグラシというセミだ。

 夜明けや夕暮れころを中心になくヒグラシヒグラシは、夏と秋が行き交うころのシンボルとして、はるか万葉の時代から詩に登場する。

 萩の花 咲きたる野辺に
   ひぐらしのなくたるなへに 秋の風吹く
      (万葉集巻十の二二三一  作者不明)。

夏が薄れて 秋が満ちてくる

 8月は本格的な秋の到来はまだ先のこととなるが、夏が薄れて代わりに秋が満ちてくる様子を毎日のように楽しめる。例えば、夏の絶頂期まで大活躍してきた、丸々太ったコガネグモがだんだん少なくなり、代わりに秋の到来を告げる、スタイルのスリムのナガコガネグモが目立つようになる。8月は稲の出穂期でもある。

 コガネグモの仲間は世界中に生息する。コガネグモとナガコガネグモの二種は分類上の近い仲間であり、大きさも同じ、似たような環境に網を張るが、時期的な住み分けにより競争を避けている。その網には秘密も潜んでいる。ハリー・ポッターは「隠れ蓑」を被ってホグワーツ魔法魔術学校を忍び歩いたが、コガネグモの網に「隠れ帯」がある。詳しくはNPO法人ラーバン千葉ネットワークのホームページをチェックして下さい。

 One night, a band of Viking warriors invaded Scotland. They landed on the beach, then took off their boots and tiptoed quietly towards the Scottish army encampment. Their plan was to sneak up on the Scottish soldiers.

 Just as they reached the outskirts, the Vikings stepped into a patch of thorny thistles. 前uch! Ouch!・ They yelled loudly. The Scots woke up. They grabbed their swords and rushed out to fight the invaders. The thistle saved the Scottish army from the Vikings, and became the national flower of Scotland.

[注解]
band一隊  warriors戦士 invade 侵略する land on the beach砂浜に上陸  tiptoeつま先で用心深く歩く sneak up onこっそり忍び寄る encampment陣地  outskirts外れ(陣地の) patch of thorny thistles棘とげのアザミの群落―アザミは英語でthistleというが、ちょっと発音しにくいかも知れない Ouch! 痛い!

注:13世紀、バイキング(ノルウェー王国)の軍隊がスコットランドにせめてきた。ある夜、バイキング達が浜に上陸して、靴を脱いでスコットランド人に陣地に忍び込もうとしていた。ところが、陣地の周りに群衆したアザミを踏んで痛がって思わず大声を出した。スコットランドの兵士たちが起き上がって侵略者を追い払った。ここからアザミがスコットランドの国花に選ばれた。
 この同じアザミがニュータウン周辺の道端にも生える。その和名はアメリカオニアザミだが、これは誤称。元々ヨーロッパ原産のアザミが先にアメリカに外来種として帰化して、そこから日本に入ってきたらしい。花はとても綺麗だが、棘が大きくて、堅くて、鋭くて、下手に触ると大怪我する。このアザミの棘を一度見たらスコットランドの花の伝説に納得できる。

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Best Wishes just before the start of High Summer
日本は梅雨のおかげで本格的な夏の到来が遅くなる。ぼくのアメリカの田舎では、7月4日の独立記念日が夏シーズンのスタートとされる。アパラチア山地の農家たちはよく「Knee-high by the Fourth of July」と言うが、これはトウモロコシが7月4日頃、膝の高さまで伸びていれば順調と考えて良いとの意味。僕たち子どもも、大好物のトウモロコシの成長をよく見守った。トウモロコシは夏の終わりを告げる、9月の最初の月曜日に祝う労働の日祭り(Labor Day Festival)で食べる。日本ではトウモロコシを焼いて醤油味でいただくが、アメリカではゆでて塩バター味で食べる。とりたてのトウモロコアシは甘くて美味しかった!

テラスポンドの主は獰猛なカミツキガメ

アメリカ北東部の夏は日本に負けないほど厳しいが、僕たちは毎日のように湖や川で泳いでその蒸し暑さを凌いだ。ぼくの田舎には泳げない人はいなかったほど、まるでカッパのような水辺生活だった。特に、テラス・ポンド(Terrace Pond)という、山の岩盤の天然な窪みで出来た素晴らしい池があった。池は深くて周りに高い石崖に囲まれていて、水は真夏でも冷たく美しく透き通っていた。
テラス・ポンドは山の奥深いところにあるが、僕たちは一時間も山道を走って、池で泳いだり崖から水に飛び込んだりしていた。ただ、テラス・ポンドにいる時はいつも、どきどきはらはらだった。地元の伝説では、この池に「テラス・ポンドの主」という妖怪が住んでいるとの言い伝えがあったからだ。池の主は何百年も生きているともいわれるカミツキガメの大亀だった。カミツキガメは、どこの池にもいる普通のものであっても、甲羅は50センチ、体重は軽く20キロを超える。肉食性が強い、性格が獰猛で、名前通り(和名のカミツキガメは英名のsnapping turtleの直訳)、下手に手を出すと指が酷く噛みちぎられる。

 印旛沼の近くに住んでいたカミツキガメ。体重10キロ程度の若い個体。 

嫌われ者の外来種も、田舎の仲間との再会のよう

実は、このテラス・ポンドのモンスターは今でも千葉ニュータウンの周辺にも潜んでいる。アメリカのカミツキガメはひと頃日本でもペットとして飼育されていた。小亀は可愛いが、大きくなると普通の人の手にはとても負えない。困った飼い主たちはこっそりカメを印旛沼などに持ってきて捨ててしまった。捨てられたカメは生き残って、繁殖を繰り返しながら住みついた。
このような他地域から侵入してきたインベーダーは「外来種」というが、カミツキガメの他、アメリカザリガニ、ウシガエル、ブラックバス、ブルーギル、アライグマなど、ぼくのアメリカの田舎の遊び仲間がニュータウン周辺の里山に集結している。まるでアパラチア山地の同窓会のようだ。外来種は生物多様性や生態系に悪影響を及ぼし、環境問題として扱われるし、上記の5種はいずれも、「日本の戦略的外来種ワースト100」としてブラック・リストに載っている。
ぼくの気持は複雑だ。これらの外来種は環境問題であると充分理解しているが、やはり、田舎の仲間は恋しい。例えば、ザリガニはイタチやサギの仲間などの重要な餌となっているし、小学生の絵描きモデルにもなってくれる。また、夏になると下の調整池に住みついたウシガエルの「モーモー」の鳴き声がマンション20階のベランダまで鳴り響いてくる。他の住民には騒音にしか聞こえないらしいが、ぼくにとっては美しく懐かしいラプソディーなのだ。

娘が小学一年生の時、図工で描いたアメリカザリガニ。   

さとやま通信

梅雨が明けると道端の野の花がいっせいに咲きはじめる。身近な植物と仲良くなる絶好なチャンス。ヤブガラシの秘密・ヒルガオとコヒルガオの簡単な見分け方・夏の嫌な虫刺されを癒せる道端の野草・愛するペットを苦しめる夏の虫を退治する雑木林の木などなど。詳しくはRCNのホームページをチェックして下さい!

Tomoe Gozen was a beautiful woman with creamy white skin and shiny raven hair. She was also a woman warrior, as strong as any man, and the best rider and archer in all the land.
Tomoe was the lover and comrade in arms of the famous Genji general Yoshinaka. Together they defeated the Heike armies. In the year 1184, however, they were attacked by a great force. Tomoe fought bravely, and even twisted the head off an enemy general with her bare hands, but they were outnumbered, and Yoshinaka was killed.
Tomoe fled to the east. She lived for many years in the Kobayashi area of Inzai. You can still visit her grave there.

[注解]
raven 本来の意味はワタリガラスだが、漆黒の意味にも使える woman warrior女武者 rider騎手 archer射手 best in all the land全国でも最も優れたもの lover愛人 
comrade in arms戦友 Yoshinaka木曽義仲 defeated打ち破れた force兵力 fought bravely勇猛に戦う twisted the head off an enemy general with her bare hands敵の大将の首を素手でねじ切った outnumbered数で圧倒された  fled 逃げる、落ちる grave墓:美貌で強い女武者でもあった巴御前は、愛人の義仲が打ち破れた後、東に逃げて、やがて印西の小林に隠れ住みしたという。そのお墓は小林地区の鳥見神社と八坂神社の間にある。地元の人たちは今でも誇りを持って大事にしている。

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Best Wishes during this season of irises and hydrangeas.

ぼくは、自然を観察したり、伝承文化を学んだりなどをしてカントリー・ラムブリンを楽しんでいる。ラムブリン・スタイルのSATOYAMAサイクリングも、このニュータウン周辺の北総カントリーサイドは最高だ!

田園景観ともいうべき、このカントリーサイドは、農業などの暮らしの文化について学ぶチャンスもとても多い。なにしろ、この美しく、自然豊かな景観は元々、村人たちの暮らしの営みによって育まれてきた文化景観なのだから。

例えば、a very long time ago、農家のおばあちゃんと話す機会を得た。話は農家の敷地内で、お茶を飲みながら行ったが、丁度その時、その家は改築中だった。そして、大工さんたちが通る道のすぐ側の木にコガタスズメバチが巣を作っていた。彼らは蜂に刺されるのではないかと心配して、巣を壊したいとおばあちゃんに相談した。ところが、おばあちゃんは、「壊さなくて良い。静かに歩けば蜂は刺したりなんかしないから」と断った。

その後、話はいろんな動物のことになり、ノウサギが畑の作物を食い荒らすが、それは仕方がないのだと、おばあちゃんは説いた。「動物たちも子育てに必死で、生きる権利がある。かれらの食べる分を計算して野菜の種を蒔くのだ」と。

里山を育んできた生活スタイル

 ぼくは、このおばあちゃんの言葉の中に、美しい里山の秘密を知ることができた気がした。まず、おばあちゃんの心のおおらかさが印象に残った。そして、その自然への優しいまなざしと接しかた、自然と生き物にも気を配るというおばあちゃんの生活スタイル、このスタイルこそ、日本の里山を創生し、長年にわたって育んできた倫理に違いないと、その時から思っている。

 ところで、おばあちゃんの話のなかで何度も「キネズミ」という生き物の名を耳にするようになった。ぼくは最初、混乱した。そんな動物の名前を聞いたことがなかったから。しかし話が少し進むと、「あーー、キネズミ≠チてリスのことか」と了解した。

 ニホンリスは、本州、四国、九州に生息する日本の固有種だ。ニュータウン周辺には以前から棲んでいて、おばあちゃんと話した時には、リスの巣がまだ森の中ににあった。ところが、最近はリスも巣も殆ど見かけなくなった。

 先月、総武カントリークラブのそばをサイクリングで走っていると、リスのような生き物を松の木でちらっと見た。後で戻って、その木の下を探すと、沢山の「エビフライ」を見つけた。これは本当にエビを思わせる不思議なものだが、実はリスの食べ残し。リスは松の実が大好物、松ぼっくりを手首で押えて、のみ状の門歯を巧みに使って、下の方からかじって、上に進みながら中の種を取り出す。最後に松ぼっくりの芯と上部だけが残る。

 残念ながら、ニュータウン周辺の松は殆ど松枯れ病で枯れてしまった。リスたちは、大好きな松の実を求めて、余儀なく、松が育っているカントリークラブに引っ越しちゃったのかなー?

さとやま通信

【第1号】

 千葉ニュータウン周辺のカントリーサイドで撮影した映像は、「cool japan」というNHK人気番組番組に放送されることになりました。この番組は外国人がニホンのかっこいいところを発掘する形で、今回のテーマはSATOYAMA。印西の映像は番組のイントロとして使って、ケビンが日本の里山の魅力を英語で伝える。放送はNHK のBS1で7月8日(日)23・00〜23・44および7月14日(土)18・00〜18・44。

【第2号】

 印西で活躍するNPO法人ラーバン千葉ネットワークのホーム・ページに、「ケビンの部屋」という新しいコーナーを設けました(URLは下記を参照)。カラー・イラストやナチュラリストの細かい観察記録がたっぷり。是非、一度この部屋を訪ねて下さい。

【第3号】

 5月の金環日食はスカイ・ウォッチングのブームを引き起こした。田園景観のカントリーサイドにも、田植えや稲刈り、お祭りなどの生活リスムが暦にそって流れる。白井市のプラネタリウム(電話047・492・1125)を訪ねて、暦や月の満ち欠け、季節の星座、星の伝説などについてちょっと学んでから、エキサイティングなナイト・ハイクに挑戦しても楽しいかも。

 A very long time ago, Amaterasu the Sun Goddess sent her grandson Ninigi down to earth to establish a new kingdom.

 Ninigi and his entourage left the High Plain of Takamagahara and started down. But when they came to the cosmic crossroads, the way was blocked by a huge powerful figure, with shiny red eyes. This was Sarutahiko.

 None of the kami wanted to challenge the giant Sarutahiko, so they sent the glamorous kami Uzume to have a talk with him. No one knows what exactly happened next, but after only a few minutes Sarutahiko agreed to guide Ninigi on his journey.  Uzume and Sarutahiko became lovers and travelled all over together.

 This is a story from Japanese classic mythology, but you can see a carving of Sarutahiko on a worn stone tablet located at the side entrance to the Munakata Jinja Shrine at Funao. You can also see a wonderful dynamic carving of Sarutahiko and Uzume dancing together at Minami-Boso City.

[注解]Sun Goddess 太陽の女神様 grandson 男の孫 establish 創立 kingdom (国、王国) entourage 側近 cosmic crossroads 色々な時空に通じ会う交差点 none of the kami 神のだれも glamorous グラマラス グラマーの本来の意味は人をうっとりさせることができる魅力 No one knows ・. サルタヒコは最初、敵としてニニギたちの前に立ちはだかり、地球への道をブロックしようとしている。そこでウズメが側に行く。その後、二人の間にはなにがあったか?残念ながらそれは全く書いていない。しかしウズメをうけて、サルタヒコは急に態度を一転して、今度はニニギたちの案内役までやってくれることになる。われわれケルト人は、このエピソードを簡単に推理できる。ウズメはその凄まじいグラマーをかけて、サルタヒコを完全に魅了したに違いない。その後、サルタヒコはウズメに夢中になって、二人はsoul mates(宿命の恋人)として旅にでる。

classic mythology 古事記、日本書記などに伝わる日本の古典神話 stone tabletサルタヒコを描いたほころびた石塔は、船尾の宗像神社(船尾交差点の近くに座す)の側の入り口付近の庚申塔と一緒にある。おそらく、庚申信仰と関係するだろ。また、ここからはちょっと遠いが、南房総市にサルタヒコとウズメをダイナミックに描いた有名な道祖神石塔もある。

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 Best wishes on these cool and breezy days of early summer.

 ニュータウン周辺のカントリーサイドは四季おりおりに姿を変えて、変化に富んだ美しい「暮らしの風景」を見せてくれる。この初夏の5月中旬にも、この季節ならではの神秘的な風景を楽しめる。斜面林の一面をパステル黄緑に塗りつぶしたスダジイの花が、青空とともに、田植えの終わったばかりの田んぼの水面に反射して、カントリー・ラムブラーを一目で魅了させる。まるで水の中でできた別の世界に吸い込まれるような不思議な風景。水面に反射する風景を愛したモネは、間違いなくこの初夏の田んぼを超名作に仕上げたかっただろう。

 Chinkapin flowers reflected on the surface of the rice paddies - A beautiful countryside landscape of early summer


 田んぼは米を生産する場や魅力的な景観であるだけではなく、様々な生き物を育む生態系でもある。特に、初夏の田んぼでは、生き物のにぎわいが一斉に爆発する。とんぼのやご、水生昆虫、甲殻類、カエルやオタマジャクシなどの小さな動物が活発に泳ぎ回って、これを目当てに色々な野鳥が田んぼに集まってくる。

 Rice paddies serve not only as valuable farmland, but also as rich natural ecosystems.

常連客や長旅途中のビジターでにぎわう田んぼレストラン

 メニューが豊富の、この「田んぼレストラン」に入るお客さんの中で、サギの仲間など地元で繁殖する常連客もいれば、長い旅の途中で一休みに立ち寄るビジターもいる。この季節になると、オーストラリアや東南アジアで冬を越したシギ・チドリの仲間は、繁殖地のシベリアやアラスカを目指して飛び立つ。

 このシギ・チドリは渡り鳥の中でも優れた飛力の持ち主であるが、さすがのかれらでさえこのぐらいの距離を一気に飛び渡ることは無理。羽が疲れて、お腹が空く。ちょうどその時、下を眺めるとそこに田植えしたばかりの田んぼがニュータウン周辺の谷間や低地を埋め尽くしている。

 Many species of bird come to feed in the ‘Rice Paddy Restaurant’.

 道路には疲れた運転手が一休みできる「道の駅」があるように、この季節の田んぼは鳥たちにとって「空の駅」となる。シギ・チドリの仲間はここに降り立って、2−3週間ばかり田んぼレストランで御馳走になる。栄養タンクを満タンにしてから、再び北国の繁殖地を目指して飛び立つ。

自然保護に大貢献 ニュータウン周辺の田んぼ

 ニュータウン周辺の田んぼには、チドリの仲間のムナグロとコチドリと、シギの仲間のキョウジョシギ、チュウシャクシギとキアシシギをよく見かける。また、田の間の畔には、ヒバリや一部はここで残って繁殖するコチドリが地面の上で巣を作る。こうして、長距離を渡るシギ・チドリ類になくてはならない休憩地を与えるニュータウン周辺の田んぼは、国際的にも自然保護に役に立っている。

 Many migratory shorebirds depend on rice paddies as a vital stopover habitat.

 古代ケルト文化には、その昔から季節の巡りを地球の女神様の一生に見立て考える思想があった。春先に地球から生まれてくる女神様が、色々な花が咲き、動物が繁殖に忙しいこの初夏の季節になると、可愛らしい少女から熟したセクシーな女に変わりゆき、森の男神を愛人として受け入れることとなる。その関係から身ごもった赤ちゃんは、夏を通して女神様のお腹でぐんぐん育ち、秋になると木の実や作物などの稔として生まれてくる。冬に入ると女神様は老いて冬至の頃でやがて死ぬが、翌年の春に再び生まれる。

 In early spring the Earth Goddess matures into a young lady and takes the Forest God as her lover.

   Tokiwa Gozen was the most beautiful girl in all the capital. She married a handsome Genji Clan warrior named Yoshitomo. They had three sons.

   In 1160, Yoshitomo was defeated by Kiyomori of the Heike Clan. Tokiwa and her three boys fled south over the snow-covered mountains. Later they came back to the capital. Kiyomori fell in love with Tokiwa. He spared her boys’ lives, and they became lovers.

   One of Tokiwa’s sons, Ushiwakamaru, learned secret sword-fighting techniques from tengu fairies. He grew up to be a great general, and avenged his father by destroying the Heike Clan.

   You can see a beautiful wood carving that shows Tokiwa sheltering her three sons from the cold and snow, at the Torimi-Jinja Shrine at Omori. You can also enjoy several huge Japanese torreya trees in the shrine’s sacred grove. Be careful not to prick your finger on the stiff, sharp leaves!

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Here comes Peter Cottontail
Hopping down the Bunny Trail
Hippity-Hoppity, Hippity-Hoppity
Easter’s on its way

 これはぼくが幼い頃で母や叔母によく聞かさせてもらった伝承童謡。「おら、ワタオウサギのピーターが兎道を跳ねてやってくる。ぴょん・ぴょん・ぴょん・ぴょん。もうすぐ復活祭だよ!」のような意味です。西洋の暦上、復活祭は春分を過ぎた最初の満月の後の日曜日と決まっているが、今年は4月8日だった。復活際は十字架に磔にされたイエスが死から生き返って天に昇ったという奇跡を祝う大事な祭りだが、多くのキリスト教の祭り同様、古代のアニミズム的な宇宙観から多くのモチーフも取り込んでいる。復活祭は英語でEasterというが、これは古代ゲルマンやアングロサクソン人が祀った春の女神エストレ(Eostre)にちなむ。そして、エストレの使いとされるウサギやその象徴であるタマゴが、そのまま復活祭の風習に残されている。

 ウサギは春の女神の使いとして特に相応しい。冬を通してあまり目立たないウサギは、春になると繁殖期を迎え、全くばかげたようにはしゃぎまわりだす。ウサギの絶好な餌場となる牧草地が広がるイギリスや北欧のカントリーサイドには、春のウサギの存在は特に大きい。ぼくのアパラチアン山地の田舎にもウサギが満ち溢れていた。牧草地の多いカントリーサイドには、ウサギは食物連鎖の中盤を固めて、キツネ、イタチ、中型の猛禽類など多くの捕食動物の貴重な餌となる。

可愛らしいバニーと旺盛な繁殖力のノウサギ


ウサギのことは英語でrabbit, hareまたはbunnyと言う。そのなかのバニーは日本語の「うさちゃん」のように幼児が用いる可愛いらしい感じの愛称である。復活祭で子供にチョコを運んで、色を付けた湯卵を隠すイースターバニーはこのイメージ。全く反面、ウサギの激しい求愛行動や見事な繁殖力に注目して、ホステスクラブのバニーガールのような官能的な女性に見立てることもよくある。

 ピーターラビットに代表されるrabbitは、地中に巣穴を掘ってその中に子供を育てるアナウサギ(穴兎)の仲間を指す。巣穴の中に保護されているアナウサギの子供は裸、目の閉じた状態で誕生する。ペットショップやこども動物園などで観られる可愛いカイウサギもアナウサギの仲間。

 対照的にhareは巣穴を利用しないノウサギ(野兎)の仲間のこと。ノウサギの母は地面を少し掻いてごく浅い窪みを掘り、その中に子供を産む。こどもは生まれながら毛で覆われ、目も開いている。生まれてすぐに走ることもできる。不思議の国のアリスの「めちゃくちゃ御茶会」のエピソードでアリスをいらいち立たせるMarch Hare(マーチ・ヘアー=三月ウサギ)はノウサギの仲間。英語でMad as a March Hare (三月ウサギのように気が狂っている)という古い慣用句があるが、これもノウサギの激しい繁殖行動に習ったものである。

ニュータウン周辺の野原を駆けまわるノウサギ

 畑の作物、畔道の野草、または雑木林の下草など美味しい餌に満ちているニュータウン周辺のカントリーサイド(田園景観)にも野生のノウサギが暮らしている。これはニホンノウサギ(Japanese hare=日本の兎ではなく、日本野兎)という、本州、四国、九州と佐渡島に棲む日本の固有種(日本だけに生息する種)である。ニホンノウサギは人見知りで夜行性、昼間は密集した藪などに潜んでいる。また、群れを作らないで単独で生活するから、数もけっして多くはない。だからノウサギを直接に見かけることは少ない。でも畑に残された足跡や糞でその存在を簡単に確認することができる。


 ノウサギの足跡は一目瞭然。後足の大きな跡が前足の小さい跡の前につく。これはノウサギの走るフォームの結果。前足で着陸するが、それから後足を前方に出して地面を蹴って力強く跳ねる。穴を持たないノウサギが敵から逃れる唯一の頼りになるのはこの後足のすさましいパワー。フルスピードで走ると一跳で2メートルも跳べる。犬や猫、タヌキなどはまったく相手にならないが、宿敵であるキツネも足がとっても速い。ノウサギとキツネとの命をかけた駆け競べは、夜のカントリーサイドに繰り広がる名ドラマなのだ。

   Late one night, a drunken man was walking home through a dark forest. He heard a cat meow. Can you play the flute?” He asked. “No, I can’t.” The cat answered. “Because I drank some hot gruel and burned my throat.”
   The man was very scared. He ran all the way home. “A long time ago,” His grandmother told him. “A pet cat named Hachiro drank some hot adzuki-bean gruel. He scorched his throat and died.”
   The cat in the dark forest was Hachiro’s spirit. The man made a memorial stone to pray for the cat-spirit. You can still see this stone beneath three huge zelkova trees, at a crossroad just up the hill from the Muzai bus stop in Inzai. The stone was carved in 1891.

drunken manよっぱらい through a dark forest暗い森の中を meow猫の鳴き声(猫は英語でミーアオと鳴く) play the flute笛を吹く can’t出来ない(can notの短縮形) answer返事する hot gruel熱いお粥 burn 火傷する throat 喉 scared怖がる adzuki-bean gruel小豆粥 scorch火傷する spirit 魂、霊  memorial stone供養塔 pray for祈る huge でっかい zelkova ケヤキ crossroad just up the hill from the Muzai bus stop武(む)西(ざい)のバス停留所から坂を上った交差路 carved彫る 1891 明治24年

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 あけましておめでとうございます。Happy New Year !

 初めまして。今月号から連載エッセイを担当させていただくケビンです。

 ぼくは25年間も千葉ニュータウンに住んでいます。ニュータウンが大好きです。特に、ニュータウン周辺に広がるカントリーサイド(田園風景)に魅せられ、このエッセイを通してその風景に染み込んである自然や文化の魅力を伝えたいと思っています。その前に、まず少し自己紹介させてください。

 ぼくはアメリカ人、の生まれ育った故郷はニューヨーク市の下町、ブルックリンです。両親もニューヨーク生まれ、親父は退職までウォール街の銀行で働くごく普通のサラリーマンだった。ブルクリンだからベースボールの応援はヤンキーズではなく、メッツ!  I am a Mets fan !

子供の頃過ごしたニューヨーク郊外の田園風景と共鳴しあう

千葉ニュータウンの環境

 ぼくには第二の故郷もある。ニューヨークから車で一時間しか離れていない場所だが、アパラチア山地の奥深い所、牧草地やリンゴ畑、雑木林、パンプキン畑などが広がる別世界の田舎だった。この田舎は「カントリー」とか「カントリーサイド」と呼ばれているが、子どもにとっては遊びの楽園だった。森や野原を探検したり、秘密基地を作ったりして一日を過ごしたものだ。

 ぼくはアメリカの田舎と、ここニュータウン周辺の田畑との間に共鳴しあうものを強く感じている。もちろん、向こうは牧草地が中心、ここは田んぼで、風景の内容はぜんぜん違う。が、暮らしのペースと自然のペースがお互いにタイミングを合わせているという雰囲気は同じだ。

 この自然と文化のお見事の融合こそ、カントリーサイドの最大の魅力に違いない。The countryside is a place where the rhythms of nature are in sync with the people’s lifestyles.

 ぼくは、生物学や生態学のイメージが強いかもしれないが、もともとの専門は文化人類学。植物や昆虫などの知識は全部、独学として学んできたもの、生物学者よりもぼくはnaturalist(ナチュラリスト)といった方がよいだろう。

画像をクリックすると拡大画像が見られます。 (以下同) 

多様で豊富なニュータウン周辺の自然

 ナチュラリストは努力と根気の世界、その基本はひたすらフィールドを歩きまわって、自然界をできるだけ細かい所までじっと観察すること。ニュータウン周辺のカントリーサイドは人の手が入っているとはいっても、森林や水辺などの環境が豊富、そこに様々なタイプの生き物が暮らしている(つまり、生物多様性が高い)。ぼくは25年前、この豊かな自然に刺激されて、ナチュラリストを目指すようになった。The rich biodiversity around Chiba NT inspired me to become a naturalist.

 例えば、ニュータウン周辺で行われた植物調査の結果として、1km四方の調査地になんと700種類以上の植物を記録した。これを全部知り尽くすのは一人分の人生時間ではぜんぜん足りないが、とりあえず、ある程度に目立つ樹木や野草からスタート、写真を撮ったり、イラストを描いたりして、マイペースでできるだけ多くの植物に親しもうと考えている。ぼくの植物イラストはナチュラリスト流。芸術性よりも、その特徴を強調した実用的なものをめざしている。植物だけではなく、野鳥や昆虫、カエルなどもに写真やイラストを通して楽しんでいる。

人と自然のコラボレーション

 いま一番ハマっているのは、ニュータウンとその周辺だけの樹木図鑑。ここは気候が温暖で、冬になると葉を落とす落葉樹と、一年中葉を着けている常緑樹の両方が混ざっていて、木はとにかく種類が多い。ぼくの樹木イラストは70枚を超えているが、これでも全種の半分しか終わっていない。More than 100 tree species can be found in the NT area.

 カントリーサイドの魅力は自然に限られない。元々、白神山地のブナ林のような原生自然(wilderness)ではなく、維持可能な暮らしライフスタイル(traditional sustainable lifestyles)の営みによって誕生し、いままでも育まれてきた文化景観(cultural landscape)である。まあ、人と自然のコラボレーションの名作といえばわかりやすいだろう。

 ニュータウン周辺の文化景観は、好奇心を誘う豊かな歴史跡や伝承文化に恵まれている。牧草地として、または利根川の河岸街として栄えた時代もあり、平将門や源頼政をめぐる伝説や「印旛沼の主」、「草深原のキツネ」の御伽などのlocal folkloreも豊富だ。民間信仰については庚申信仰、子安信仰、水神信仰など、代表的な形は殆どそろっている。宗像神社の美人三姉妹、頼政の忠実な馬、勇気と友情に溢れた竜、将門を裏切る絶世美人のfemme fatale(妖婦)などなど、信仰や伝承に登場するキャラクターはどこのテレビドラマにも負けないほど層は深い。

 カントリーサイドのもうひとつの魅力として無視できないのは、神社やお寺を囲む社寺林(sacred grove)など、心を癒してくれるpower spot(パワー・スポット)だ。ぼくはナチュラリストでありながらmystic(神秘主義者)やanimist(アニミスト)でもあり、木や森、水辺、または小さな祠や野仏などに、目に見えない不思議な力が宿っていると信じる。ニュータウン周辺には、魂をリセットすることができる穴場が多数ある。

新たな感動求め散策する

 これからこのエッセイでカントリーランブリン(country rambling)というコンセプトを借りて、ニュータウン周辺の自然、歴史、文化などを訪ね、その魅力をたっぷり伝えたいと思っている。ランブリンは「ぶらつく」や「ぶらぶら歩く」といったほどの意味で、新しい感動や発見などを求めて、ひたすらひたすらあちこちを散策する、一種の「歩き探し」や「歩き学び」のスタイルと考えていただけばよい。

 ニュータウン周辺の道を満喫するにはぴったりのスタイルだと思う。なお、北総の素晴らしい伝承文化により楽しく触れてもらうため、HOKUSO STORYBOOKを企画している。毎回典型的な伝承をピックアップして、簡単な英文で紹介するものだが、これもお楽しみに。

 では、これから一年間の連載、よろしくお願いいたします。

   Once upon a time, a friendly young dragon was living in Inba Marsh. This dragon liked people, and often came out of the water to dance and feast with the villagers.
   One summer, the countryside was ravaged by a terrible drought. The hatake fields turned brown in the hot sun, and the rice paddies were baked as hard as stone. Soon all the crops would be lost, and the villagers would starve.
   The dragon felt sorry for his friends, and wanted to help them. One day he soared out of the marsh and flew straight up into the air. Soon afterwards there came a great thunderclap, and the rain started pouring down. The villagers clapped and cheered. “We’re saved!” “Hurrah for the dragon!” They yelled.
   But then they saw three large objects come falling out of the sky. When they ran over, they found the dragon, broken into three pieces. Some think he broke up when he crashed into the top of the sky. Others say the King of the Dragons smashed him because he made it rain without permission.
   The villagers were heartbroken. They picked up the pieces of the poor dragon’s body and brought them to their temples. Even today, the people of this area still offer their thanks to the friendly young dragon that gave his life to save them. His head and horns are enshrined at Ryukakuji Temple in Sakae; his torso at Ryufukuji Temple in Inzai; and his tail at Ryubiji Temple in Sosa.

Once upon a time 昔、昔(御伽の始まり言葉) feast 祝宴を楽しむ villagers村人たち  ravage 荒らす drought日照りrice paddy 水田 crops作物  starve飢える  feel sorry forかわいそうに思う  Hurrah万歳! smash叩き壊す  without permission 許可なしで(雨を降らした) heartbroken悲しみにうちひしがれた poor かわいそう offer thanks感謝の気持ちを伝える give his life命を犠牲にして enshrine まつる torso胴体

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 Best wishes for your health in early spring!

 今年は半世紀ぶりの大寒波が日本を襲った。ニュータウン周辺のカントリーサイド(農村景観)にも、日当たりの悪いところに氷が張りついた。

 しかしいくら寒いと言っても、南関東の冬はそれほど厳しいものとは感じない。ぼくはニューヨーク市に生まれたが、10歳のころ、アパラチア山地の小さな村に引っ越した。この第二の故郷は山の奥深いところにあり、冬は本当に寒かった。雪も降り積もって、毎年ホワイトクリスマスだった。そして、雪が降るとスクールバスが動かないから、学校は休校に。やったー!朝から外に飛び出て、アイススケート、橇滑り、雪玉合戦などの遊びで一日を目一杯楽しんだ。

照葉樹が多い南関東の冬景色

 南関東の冬が暖かい証しとして、この辺の樹木を見れば一目瞭然。コナラやケヤキなど、秋の終わりころに紅葉して葉っぱを落とす落葉樹(らくようじゅ)もあるが、一年中葉を付ける樹木も多い。このような木は植物学者が「常緑(じょうりょく)広葉樹(こうようじゅ)」と呼んでいるが、葉は厚くて、表面に美しい光沢を帯びるから、一般に「照(しょう)葉樹(ようじゅ)」とも言う。

 照葉樹は穏やかな気候を好み、アジアの亜熱帯と温暖帯に広く分布する。ニュータウン付近の林に自生していることもよくある。でも、その迫力を満喫したいと思っていれば、神社の周りにそびえる「鎮守(ちんじゅ)の森(もり)」を訪ねるのが一番良い。鎮守の森は聖なる空間であるため、木の伐採は殆ど行わない。その結果、原生林に近い雰囲気を色濃く残している。

聖なる空間 鎮守の森

 ニュータウン周辺の鎮守の森は、樫(かし)の仲間のアカガシと、普段から「椎(しい)」として親しまれているスダジイの大木が主役である。アカガシの葉は大きく、縁に鋸歯がない。ドングリも大きく、そのハカマに横縞の模様が走る。材は堅くて、木刀やゲートボールのスティックなどに使われる。スダジイの葉は裏面も灰褐色の光沢を帯びる。そのまま食べられるドングリは細長くて、鞘のようなハカマに包まれる。

 照葉樹の厚い葉は光を殆ど通さないから、鎮守の森の中はいつも薄暗い。でも、冬に鮮やかな赤い実を飾るアオキやこれから美しい花を咲かせるヤブツバキなど、この暗い環境を好んで生える低木もある。また、大木の幹に出来る虚(うろ)ウロはフクロウにとって絶好な巣穴となる。ニュータウン周辺の鎮守の森には、日本で最小のキツツキであるコゲラもその可愛いらしい姿をよく見せてくれる。

 鎮守の森の大木は上で枝を重な合わせ、高いドームを作る。まるで自然の大聖堂にいるような神秘的な空気が森中に漂う。ぼくはスタジオジブリのアニメ映画の大ファンだが、「もののけ姫」は、神秘的な照葉樹林を「シシ神の森」として見事に描いている。また、「となりのトトロ」の主役トトロも照葉樹の鎮守の森の主である。

 You can see wonderful sacred groves portrayed in Studio Ghibli anime such as Princess Mononoke and My Neighbor Totoro.

 画像をクリックすると拡大画像が見られます。 (以下同)   

産土神社は、心と体をリセットできるパワースポット

 北総地方には大きな有名な神社はないもの、鳥見神社や宗像神社など、各集落ごとに小さな産土(うぶすな)神社がある。このような神社に立ち寄ることもカントリーラムブリンの楽しみの一つだ。例えば、ぼくの大好きなラムブリン・フィールドは高花団地からアクセスしやすい結縁寺。ここは朝日新聞のニッポンの里百選にも選ばれ、結縁寺と熊野神社を中心に水神様を祭るため池や、名馬塚など有名な源頼政伝説のゆかりの地が点在している。まさしくラムブリンにもってこいのエリア。

 いまは「パーワー・スポット」という言葉が流行っている。幽霊が出るとか、金運などの御利益を得るというイメージが強いが、本来の意味はそうではない。心と体をリセットして、パーワーアップすることのできる聖なる場所である。鎮守の森に抱かれた小さな産土神社は、その周辺の自然エネルギーがわき出て、いにしえからその自然と共に暮らしてきた人々の強い気持ちも寄せられている。最高なパーワー・スポットである。大木が送り届けてくれるエネルギーを浴びながら、ヨーガやストレッチングしたり、またはひたすら静かに立つと、何ともリラックス気分に。

 Local village shrines are power spots for spiritual empowerment and healing.

   Yorimasa Minamoto was a famous samurai living in the capital during the 12th century. In 1180, he was defeated in battle. He didn’t want to be captured by his enemies, so he committed suicide.
   Yorimasa was afraid that his severed head would be stuck on a pole and paraded through the streets of the capital. “After I’m dead, put my head on my horse and ride east.” He instructed his retainers.
   The men put Yorimasa’s severed head on his horse. The horse ran eastwards for many days. Finally, just when they reached Kechienji Temple in Inzai, the head grew heavy, and the brave horse collapsed from exhaustion. The local farmers buried the head at Yorimasa-tsuka, and the horse at Meiba-zuka. You can still visit these spots today. There are many beautiful stone statues of Horsehead Kannon at Meiba-zuka.

samurai 「侍」はそのまま英単語になっている the capital 都 was defeated 打ち破られた battle 戦 be captured敵の手に拘束される commit suicide 自害する  was afraid 恐れていた severed head 首(切断された頭) stuck on a pole杭に差しとめられる paraded through さらし首になる retainer 家来 reach たどり着く  grew heavy次第に重くなった collapse 倒れる exhaustion 極度の疲労  bury 埋める stone statues 石像 Horsehead Kannon 馬頭観音

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 三月の初めは、ハコベやホトケノザなどの野草が道端や畔の陽だまりでたくましく花を咲かせて、春の気配を微かに感じさせるが、土地はまだまだ冬の支配下にある。しかし本格的な春はすぐそばで待ち伏せて、政権交代のチャンスをうかがっている。英語でも、March comes in like a lion, but goes out like a lambと言うが、これは、三月はライオンのような荒々しい態度で始まるが、子羊のようにおとなしく去って行くとの意味。

 画像をクリックすると拡大画像が見られます。 (以下同)  

 このころわれわれカントリー・ラムブラーは、谷津と呼ばれる幅の細い谷間の奥深く分け入って、ニホンアカガエルの卵を探している。このかえるは普段から雑木林の床に暮らし、ミミズやダンゴムシ、クモなどを食べているが、二〜三月の寒い時期に田んぼに集まって貯まり水に産卵する。元々はどこの田んぼもその卵で賑わっていたが、産卵に適した冬に水の残る湿田は急激に減って、今このニホンアカガエルは谷津の奥にわずか残った小さな「谷津田」を頼ってかろうじて生き延びている。千葉県は「レッドデータブック」という、絶滅の恐れのある生き物に関する情報をまとめた本を作成しているが、その中にニホンアカガエルはAランク(絶滅の危険性が最も高い種類)として載っている。卵はグレープフルーツ大の丸い塊、一匹のメスは一塊を産みつける。

  The Japanese brown frog is an endangered species.

鎮守の森で一休み

 カエルの卵探しに疲れると、近くの神社で安息を求める。今回はニュータウン木刈地区の調節池から流れ出す浦部川水系を歩きまわって、小倉の鳥(とり)見(み)神社(じんじゃ)に一休みをとることにした。この神社は特に有名ではないが、立派な鎮守の森を誇っている。小さな本殿を囲んで、スダジイの大木5〜6本と大きなクスノキ一本が高くそびえている。ぼくはラムブリン中、いつもテープメジャーを持ち歩いている。大木の周囲を図るために使うが、ここのクスノキはトトロの住むものと比べるとまだ小さくて、周囲350cm(直径110cm)。


 クスノキは典型的な常緑(じょうりょく)広葉樹(こうようじゅ)。関東地方にはあまり自生しないが、植えれば元気に育つ。神社の神聖の木のほか、公園樹や街路樹にも広く使われている。枝や葉を蒸留して、衣服の防虫剤や防腐剤として利用できるcamphor(樟脳(しょうのう))を取りだす。クスノキの葉を千切れば樟脳の独特な香りを嗅ぐことができる。また、クスノキは虫害や腐敗に強いから、昔から船の材料として貴重とされてきた。日本のクラシック神話(日本書記)によると、高天原を荒らして追放されたあの暴れん坊神スサノオが、自らの眉毛をむして最初のクスノキを創生したという。

   Susano created the first camphor trees from his eyebrow hairs.

 鎮守の森の大木に夢中になると、ずっと天上を見ていて、首にひきつりを起こす。こうなると、目線を完全に変えて、地面すれすれに注目する。ここでまた面白い常緑樹に出会える。これは大木それどころか、高さわずか10センチ、幹の太さ数ミリ、葉っぱは指で数える程度の小人妖精のような木。ヤブコウジという。一日中暗いところでも構わないから、スダジイなどの大木の下で元気に生える。世界でも最も小さな木の一つかも知れないが、英名coralberry(サンゴのように鮮やかな色の実の意味)らしく、宝石のように美しく輝く赤い実を1〜2個飾っている。

   The tiny coralberry tree has beautiful red berries.

キツネよ、姿を見せてくれ

 ぼくは25年間このニュータウン周辺をラムブリンしているが、いつも探しているのに一度もみたことのない動物がある。キツネだ。ちょっと変な趣味と思われるかもしれないが、ぼくは車にはねられて死んだ動物の死体を見かけたら必ずチェックする。今まではタヌキ、アライグマ、ハクビシン、ノウサギ、イタチなどの死体を確認しているが、キツネはない。「草深原のキツネ」などの妖キツネ伝説もこの辺に語り継がれてきたし、また、動物調査の一環として仕掛けられる自動カメラにキツネの姿も時々映る。だからキツネは間違いなくいるが、ぼくの前に姿をぜんぜん見せてくれない。くやしい!

   I have never seen a fox here in Inza !

   Once upon a time, a man owned a small candy store in Yoshida Village. Every third day, the man carried his shoulder pole across Sofuke Field to Kioroshi Town to stock up on candy for his store. One sunny day in late autumn, the man was on his way back from Kioroshi when he met a small dog. The dog wagged its trail, and the man followed it deep into Sofuke Field. The afternoon turned to twilight, and the man grew tired, cold and confused. He was now completely lost.

   Just as night’s black curtain descended, the man saw a light up ahead. It was a farmhouse. He knocked on the door, and an old couple invited him in. The man fell asleep in the farmhouse. The next morning, he told the story to the couple. They laughed. “There’s a mischievous old fox living in Sofuke Field.” They said. “He likes to bewitch people.”

candy store菓子屋 Yoshida Village吉田村(現在の印西市吉田、総武カントリークラブの南に位置) every third day 三日おきに shoulder pole天秤棒 across横切る Sofuke Field草深原 Kioroshi Town木下の街 stock up on仕入れする late autumn晩秋 wag振る twilightたそがれ confused混乱した lost道に迷った descend降りてくる farmhouse農家 couple夫婦 invite in(家の)中へ招き入れる mischievousいたずら好き bewitch 化かす。

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