[4]ラジオ体操

 今年も早朝の公園や学校の校庭でラジオ体操の、あのピアノ曲が聞こえてくる季節がやってきた。私もここ数年自治会や子供会などが実施するラジオ体操に参加し、ほとんど忘れてしまった体操を、隣の人の見よう見まねで飛んだり跳ねたりしている。

 そこで実感したことは、これを子供たちだけの夏の朝の行事にしておくには惜しいということであった。というより、育ち盛りの子供にとっては、実はラジオ体操などしてもしなくても大した変わりはないのである。むしろ、ラジオ体操をやるべきなのは絶対におとうさんたちだと確信するに至った。

 だいたい小中学生のころは、自分の身体が重いとか硬いといったことは、ほとんど意識することはない。誰でも、必要にして十分なだけの身軽さと柔軟な筋肉をもっていたのである。それが、大人になってから、特に酒を飲むようになってからの、我が身の重さや硬さというのはどうであろう。これが、あの身軽でしなやかだった自分の身体なのかと、愕然とする思いである。

 しかし、ほとんどの大人たちは、わが身体がすっかり硬くなり、敏捷さのかけらもなくなっていることは意識しているが、ラジオ体操に対するイメージは、身体が身軽で柔らかかった、小中学生のころの記憶しかない。だから、ラジオ体操など大した運動ではないと思っている。

 ところが、実際にやってみると、世の中そう甘くはないのですね。

 ラジオ体操が大した運動でなかったのは、バネのように伸縮自在で、しなやかな筋肉をしていた小中学生の頃しかラジオ体操をしなかったからだということに、第一日目で気づくはずである。大した運動でないどころか、呑んだくれてばかりの数十年間の生活を送ってきたおとうさんにとっては、背骨が折れるかと思わんばかりの重労働なのである。まあ、数日間辛抱して参加していると、背骨が折れる心配は何とか解消すると思うけど。

 私などはラジオ体操の号令をかけるオジサンというのは、ラジオで声しか聞かずに育った世代だが、その後テレビで時々みたオジサンは、例外なく筋骨隆々のモリモリ・オジサンだったことに、今にして思い当たる。あのモリモリはもしかしたらラジオ体操で鍛えたのかもしれない。でなければ、歴代のラジオ体操オジサンの中に一人くらいヒョロヒョロ・オジサンがいなくてはおかしい。 たかがラジオ体操といってバカにしてはいけないのである。

 命がけでバイアグラを飲む前に、まずは明朝から近くの公園でラジオ体操に参加してみることをぜひお勧めする。バイアグラほどの効き目はないかもしれないが、早朝の公園で、子供たちと一緒に汗を流すのもけっこういけますよ。

以上、おとうさんのためのラジオ体操講座でしたッ。

「千葉ニュータウン新聞」1998年8月15日号所載